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#297
かたちだけの愛
平野 啓一郎 中央公論新社 (2010)
プロダクト・デザイナーの相良郁哉が、たまたま遭遇した交通事故で、事故に巻き込まれた美脚の女王と称されるタレントの叶世久美子を救出すべく奔走し、その縁で事故により片足を無くした叶世の義足のデザインを引き受け、相良は叶世とやりとりするうちに微妙に移ろいゆく恋に発展するが、その先には叶世の元恋人の不穏な影が・・・
私は原発事故以降、社会問題の本を読み漁り、気持としても小説を読む心のゆとりがありませんでしたが、最近になってすこし心に余裕が出てきたようで、また小説を読んでみようという気になってきました。
そして手に取った本。
平野さんの本は初めて読みましたが、何というか、スマートですね。
と、言ってみましたが、かといって鼻につく感じは無く、すっと受け入れられる馴染みの良さがありました。
人物や場面の描写が綿密で、もしかしたらこんな展開は本当にあるかもしれない、と思わせてくれます。
片足を無くした叶世を何とか励まそうと、試行錯誤で叶世を立ち直らせようとする相良の姿の描き方はなかなか難しかったのではないでしょうか。
そして、相良と叶世のメールのやりとりのシーンは、読んでいるこちらまでドキドキしてしまいました。
ストーリーの展開にもメリハリがあり、読みながら次を期待してしまいます。
後味もすっきりとした感のあった作品でした。
2013-11-24
カテゴリー:小説
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