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#358

農場 杉谷昭人詩集

杉谷 昭人 鉱脈社 (2013)


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 杉谷さんの、主に宮崎の様子を描いた詩集ですが、特に詩集の最初を、駆け抜けるように綴られる8篇の「農場」というタイトルの詩が圧巻。
 約5年前に宮崎を中心に猛威を振るった口蹄疫。その口蹄疫に感染してもしなくても、「洗浄」のために次々と処分された牛たち。
 家族同然で育ててきた牛たちをやむなく処分しなければならない飼い主たちの苦悩と絶望と悲しみが、読み手にまるで心臓を叩く衝撃波のように伝わってきます。

 それは三年前の東日本大震災の津波や原発事故と同様、天災でありながらしかし人災とも捉え得られるこの事態に、諦めきれないやるせなさがにじんでいるようにも思えました。
 この激しく心を打つ連投は、マスメディアに乗って届いた映像や言葉より遥かにリアルに感じました。

 その他に収められた詩は、郷土の変わりゆく様子を綴ったものが中心ですが、まるで何だかドキュメンタリーフィルムのようで、その光景と空気が心に毛細管現象のようにじわりと染み込んでゆくのです。

2015-2-1

カテゴリー:詩集

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