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読書の時間 #378

戦争プロパガンダ 10の法則

アンヌ・モレリ 永田 千奈 草思社 (2002)


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 まず、目次から見てみましょう。


第1章 「われわれは戦争をしたくはない」

第2章 「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」

第3章 「敵の指導者は悪魔のような人間だ」

第4章 「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」

第5章 「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」

第6章 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」

第7章 「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」

第8章 「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」

第9章 「われわれの大義は神聖なものである」

第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」


 つまり、本のタイトルにある10の「戦争プロパガンダ」とは、この目次そのものです。

 私はこの目次を見て、思い出しました。そういえば、イラク戦争時にアメリカ大統領がこんなこと言ってたな、と。

 著者のモレリさんによると、あらゆる戦争に共通するプロパガンダの法則を解明し、そのメカニズムを示すことが本書の目的だそうです。
 様々な戦争について調べ、そして抽出されたのが、この10の「法則」。

 よくよく考えてみると、第二次大戦時の大本営も、表現こそ違え、内容としてはこれらと同じようなプロパガンダを国民に向けて行っていたわけです。


 改めて気づいたこと。
 それは、どこの国の国民も、戦争を望まないものだ、という、当たり前のこと。
だからこそ戦争を始める時に政府は、不本意だがやむを得ないから攻撃しなければならないのだ、というメッセージを国民に向かって発信し、自国の正当性を国民に刷り込むのですね。

 では、一方的に攻め込まれた国はどうなのか?という疑問が湧きますが、モレリさんは「・・・加害者も被害者も同じだということではない。ただ、敵対状態にある双方が、同じ言葉を用いているという事実を指摘しているだけである。」と述べています。
 この本の中でモレリさんは、戦争を行ったそれぞれの国々の立場を取り上げ、中立的視点で検証しようとしています。
 そうすると、戦争が始まると加害国・被害国の双方がそれぞれのプロパガンダによって、敵国の、ゆがめられた、あるいは事実無根の情報を流し、戦争のどこに正当性があるのか判断のしようがない場合がある、ということが見えてきます。

 しかし、一番恐ろしいと思ったのは、最後の章の「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」でした。
 「・・・戦争が始まると、もう誰も、公然と戦う理由を尋ねたり、本来の意味を「ねじまげる」ことなく和平を口にしたりすることはできなくなる。メディアは政治権力と密着した関係にあり、いざとなると本当の意味で意見の多様性を守ることはできないのである。」

 結局のところ、戦争においては国民が一番の被害者ですね。被害国であろうと加害国であろうと。


2015-6-26

カテゴリー:世界の社会事情と外交

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