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読書の時間 #388
若き日に薔薇を摘め
瀬戸内 寂聴 藤原 新也 河出書房新社 (2013)
2009年から2011年の2年間、計12冊が発刊された雑誌「the 寂聴」。
私は拝見しておりませんが、名前の通り、瀬戸内寂聴さんそのものがテーマであり、毎回ゲストとの対談が設けられ、自らが責任編集を行うという異色の雑誌だったようです。
その巻末に連載された、瀬戸内寂聴さんと藤原新也さんの往復書簡という形のエッセイを、まとめたのがこの本です。
この「往復書簡」が書かれた時は、瀬戸内さんの御歳は90近く、藤原さんは70近く。
お二人の年の差は約20歳近くですが、その関係は尊敬し合う友人のようでもあり、また気心知れた姉弟のようであり、日頃お互いを慕い、気遣っている仲なんですね。
そんなお二人がそれぞれお相手に捧げた、様々な言葉。雑誌での公表を前提とした文ではありますが、その奥にはそんなお二人の私的な距離感を十分感じることができます。
話題は最近のお仕事のこと、自分の昔話、最近思うこと、生と死について、幸せについて、他愛もないこと・・・など様々で、気ままに綴った手紙そのもののようにさらりとした感触ですが、随所にふと考えさせるようなテーマが含まれ、僧侶であり作家である瀬戸内さんと、写真家であり作家である藤原さんの、それぞれが歩まれた濃密な人生経験を経て発せられる言葉は、心にずしりときます。
「若き日に薔薇を摘め」。この歳になってもついつい薔薇を摘んでしまう、いつまでも若い二人の対話を読みながら、この世の中における自分の人生について、そして自分というものについて、ぼんやりと考えてしまいました。
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