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読書の時間 #396
沢田マンション物語
古庄 弘枝 情報センター出版局 (2002)
2016-2-7
高知県に、沢田マンションという、一風変わった6階建てのマンションがあります。
このマンションの最大の特徴は、何といってもオーナーの沢田嘉農さんと裕江さんが、「自力で」建てたことです。
自力で?
そうです。文字通り、自分たちの手で土を削り、型枠や鉄筋を組み、コンクリートを流して造ったのです。
そして変わっているのはそれだけではありません。
屋上まで車が上がれるスロープを造ったり、屋上に池を(後に畑)を造ったり、部屋の中は入居者による改修はもちろん要望があれば壁の撤去がOKだったり・・・
私は日本でも類を見ないそんな沢田マンションというものがどんな建物なのか、興味を覚えてこの本を手に取ったのですが、建物の特異さもさることながら、オーナーである沢田夫妻の人生も壮絶かつ波乱に満ちた独特なものでした。
嘉農さんは子どもの時に将来マンションを経営することを決意、小学校を出てから製材の仕事に就いて腕を上げ、製材の仕事の傍ら自力で家を建設し販売。
妻の裕江さんと二人三脚で、全て自らの手で次々と家を建設してゆきます。
それがとても丈夫な家と評判になり、やがてマンションを造るように。
学校や仕事で建築を学んだわけではなく、だからこそ「こんなことをしてみたい」と思い立ったらすぐに手を動かします。
その精神が活かされ、昇華されたのが現在の沢田マンション。
つくりかたを教えられてはいないからこそ、自由な発想が活かされた建物。
自分たちが食べていけるだけの儲けしかとらずに格安で貸し出し、家賃が支払えなくても部屋を貸すなど、建物ばかりでなく入居者に対しても面倒見が良かった沢田夫婦。
沢田マンションは夫妻が建てた変わった建物、というよりは、沢田夫妻の生き様そのもの、ですね。
この本は2002年と少し古いのですが、調べてみると沢田マンションは現在も賃貸住宅として営業中。
嘉農さんは残念ながらこの本が出た翌年に亡くなられたようですが、この変わった建物がいろいろなところで紹介され、時々イベントが行われ、現在も「入居者募集中」、そして宿泊もOK、見学ツアーも行っている模様。
一度、見に行ってみたくなりました。(何なら数日滞在も)
関連サイト
沢田マンション ウェブサイト
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