#103
仏教、本当の教え インド、中国、日本の理解と誤解
植木 雅俊 中央公論新社
やや挑発的なタイトルですけど、どういう本かというと、サンスクリット語やパーリ語で書かれたインドの原始仏教の仏典を読み解き、漢語と日本語の仏典と読み比べ、仏教発祥の地であるインドから中国、日本に伝わるまで、どのように教えが変わっていったかという、学術的見地から研究した本なのです。
まず、インド仏教の基本思想として、「仏教は徹底して平等を説いた」「仏教は迷信やドグマや占いなどを徹底して排除した」「仏教は西洋的な倫理観を説かなかった」を挙げてます。シンプルです。
そして中国に移った仏教は漢訳されました。もちろん基本は意訳ですが、中国に無い概念などは音訳されます。しかし、音訳に当てた漢字一文字ごとにも意味がありますから、サンスクリット語やパーリ語の音に合わせるためだけに当てた漢字が後世に伝わる間に意味を持ってしまったということが多いようです。
植木さんは「教典に展開されているストーリー全体よりも、部分の文字のほうに注目していたといえよう」と述べてます。
さて、ご存知のように日本には仏教は中国から伝わります。そして、他の国々ではその国の言葉に訳された仏教の仏典は、なぜか日本には漢訳で入ってきてそのまま使われたのです。
日本人は漢字が分かりますから漢字一文字一文字の意味は分かりますが、言葉や文章としてニュアンスが誤って解釈されていることも多いようですし、あえて恣意的に別の解釈をしていることもあるようです。
つまり、これらはそれぞれの土地の文化に適応して変わってゆく、ということなのでしょう。仏典の他にも、儀式や文化など、それらの変容について語られ、なかなか興味深いものでした。
だからといって元の教えが優れているとかそうでないとかという議論が出来るはずもないことは言うまでもありません。
2012-2-9
カテゴリー:宗教・信仰
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