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#22

熊楠さん


2012-2-12


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 南方熊楠(みなかたくまぐす)さん。明治時代の1867年和歌山生まれ。

 熊楠さんを初めて知ったのは5年ほど前、外苑前のワタリウム美術館で「クマグスの森展」という企画展が行われた時でした。昔、粘菌類について調べていた面白い人がいるとのことなので、足を運びました。
 そこには、熊楠さんが所有していた、粘菌類を研究する道具類とともに、粘菌類の標本、スケッチなどが並んでおりまして、スケッチなんかはきれいに色づけされていて、ワタリウムはいつもなら芸術作品が展示されているところですから、なかなか見栄えもよかったのを覚えています。(そのときに併せてクマグスの森という本も出版されました。)

 若くしてアメリカ・キューバ・ロンドンなど海外を旅したこと、那智に戻って粘菌類の調査をしたこと、人間の精神という内的宇宙への関心、そして民俗学への関心。
 熊楠ヒストリーが分かりやすく説明されてました。この方の有名な活動といえば、明治政府が出した神社合祀令に反対して田辺湾の神島の森を伐採から守ったことでしょうか。日本最初のエコロジストともいわれることもあります。

 展示を見た時は、熊楠さん、生物学者でもあり民俗学者でもあり思想家でもあり、一体何者だろうか、と。まあでも、そんな肩書き、どうでもいいんですよね。肩書き不詳で好きなことやってる熊楠さんってかっこいいなあと、その時は思ったのです。

 そして十日ほど前に、NHKにて「森と水と共に生きる ~田中正造と南方熊楠〜」というタイトルで、足尾銅山の鉱毒被害を訴える活動をした田中正造さんとセットで、その足跡をたどる番組が放映されました。
 ここでは主に、熊野の森を歩き回って粘菌類を調べ、その研究しながら得た熊楠さん独特の世界観が南方マンダラを生み出し、神社合祀令によって神社が取り壊され森が伐採されるのを阻止する運動に奔走する姿を紹介してました。100年先を見据えた自然観。

番組中で紹介されていた言葉。

 宇宙万有は無尽なり
 ただし人すでに心あり
 心ある以上は
 心の能うだけの楽しみを
 宇宙より取る
 宇宙の幾分を化して
 己れの心の楽しみとす
 これを智と称することかと思う

 ああ、熊楠さんって、彼自身が「宇宙」のままに生き、それを体現した人なんじゃなだろうか。
「物」と「心」の接触で生まれる「事」への関心。顕微鏡の中の小さな宇宙、熊野の森という宇宙、そして世界という宇宙、そして自分の中の宇宙。それらはばらばらではなくて、境界も無くて、皆がつながっている。
 それを解き明かすために必然だったのが、海外での旅であり、粘菌類の研究であり、民俗学への接触であり、熊野で生きること。

 番組の中で熊楠さんが著書の中で「エコロギー」という言葉を用いていたという紹介があり驚きました。明治時代からエコロジーに目を向けていた日本人がいたのか、と。
 でも熊楠さんが見ていたものはもっと大きくて、はエコロジー(生態学)という言葉の概念の表現では小さすぎました。
 この人は奥深い。

 本「クマグスの森」の中で、未完に終わった熊楠の映画の熊楠役を努めた作家の町田康氏はこう書いていました。「ということはつまり、南方熊楠を映画というスケールのなかに押込めようとして押込めなかった訳で、南方熊楠が途方もなく大きく、映画というメディアが能くこれを描けなかったということである。」

 そんなわけで、熊楠さんが見ていた宇宙、今年は熊野や田辺に行ってみようかと思ってます。



カテゴリー:気になる人たち


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