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#33

映画「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」から見えたもの


2012-4-19



「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」予告編

 昨日、自らが広島の原爆の被爆者であり、被爆者の患者たちを診つづけてきた医師・肥田舜太郎さんを追ったドキュメンタリー映画「核の傷」を観ました。

 軍医だった肥田さんは、自らが原爆により被爆しながらも医者として多くの被爆者たちを診てきたこれまでのことを語ります。
 原爆投下後に見た被爆した人たちの様子、アメリカによりABCC(原爆傷害調査委員会)が設立され、何万もの被爆者たちが調査されたこと、被爆者達は治療をしてもらえると思ってABCCの調査に参加したが調査のみで治療を施されることなく帰されたこと、その調査データや被爆の標本などはアメリカ本国に送られ、日本側からの情報提供の要請を拒否したこと、そしてこの調査研究から放射線基準が作られ現在に至ること、など。
 (そういえば、これらのことは広河 隆一さんの本「チェルノブイリから広島へ」にも書いてありました。)

 ABCCが直接の被爆しかその後遺症を認めなかった一方で、肥田さんは医学では説明できない後遺症の症状があるようだとして独自に調べてきました。そこで肥田さんがとった方法は「多くの人の症状を調べる」、つまり被爆したとされる人の多くが共通して示した症状を調べることでその後遺症を特定するということでした。そこで肥田さんは、内部被曝について多くのことを知ることになるのです。

 この映画では当時の調査の様子などの貴重な映像も流れますが、思わず目を背けたくなります。アメリカ人により番号などを書き記されたボードとともに被爆者たちが撮影される光景には、被爆者の人格というものが全く失われていました。
 私たちは、この被爆された方たちが味わった苦しみをこれから先の人たちが味わってはいけないのだ、と知らなくてはならないのです。

 もう一つ、なぜ、日本に原爆が落とされたかについて。
 最近は学校でも、広島と長崎に原爆が落とされたことについてあまり触れないそうですね。
 なぜ原爆が落とされたか。肥田さんはこう述べてます。

 「ひとつは、ソビエトに対する威嚇ですね。もうひとつは、原爆という初めての爆弾を人間に使った場合のテストなんですね。テストだった、人体実験だったっていう証拠はね、ひとつは落とした時間なんです。8時15分という時間に爆発させるということ、非常に厳密な要求だった。広島市にいる人間が、屋外、遮蔽物の無いところへたくさん出ている時間は何時なのかというのをずーっと毎日偵察、飛行機が来て写真を撮って、朝の8時15分がたくさんいるってことを確かめたわけ。今度終わった後、すぐABCCっていうのを立てて、やけどとかそういうものじゃなくて、放射線の病気でどれくらい死んでるか、そういうことを調べたわけ。」

 この映画を見ていると、政府のある方が福島第一原発事故直後に述べていた「直ちに健康に影響するものではない」と言った意味が分かります。
 言ってみれば、現在の国際基準は、ABCCの調査研究からの流れで決まった基準、いわば「原爆を落とした側の論理」、つまり放射能の影響をいかに小さく見積もるか、で決められた基準と言えるでしょう。今後被曝による後遺症を抱えると思われる人の数は当然少なくなり、それだけ補償が少なくてすむでしょう。
 国際基準は内部被曝、低線量被曝の影響を認めていませんから、もし仮に被曝により5年後10年後に健康を害する症状が現れても「それは被曝が原因です」とは認めてくれないということです。

 本編の他に、福島第一原発事故以降の、各地の講演会の記録フィルムも収められています。内容は本当にためになるものばかりです。
 肥田さんは本編(2006年)の時よりもややお年を召されてますが、それでもまだまだ精力的に講演を行い、内部被曝というのがどういうものかについて多くの方に語っておられます。そして、日頃から健康的な生活をしなさいと、当たり前のことですがそのようなことを語ってます。そして、原発もダメ、と。

 心に残った言葉。
 「結局は、自分なんですよ、命については。誰頼ってもだめ。医者なんて最もだめ(笑)。長生きする責任は政府にあるんじゃなくて、あなたがたご自身にある。それが自分の命をね、責任持つ勇気ある態度。」

 本当に気のいいおじいちゃんです。長生きして、もっと多くの方に語ってもらいたいものです。

映画公式サイト→http://www.uplink.co.jp/kakunokizu/

かつて紹介した肥田さんのこちらの本「内部被曝の脅威」もどうぞ。



カテゴリー:フィルム原発


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