#112
ムスメの緩みきった寝相にゆったりと眠れるようになった安堵感をしみじみ感じる
2013-8-18
先日、里親会の旅行に行きましたら、ある里親さんが、里子ちゃんを預かったばかりのとき、里子ちゃんが夜眠るのを怖がっていた、という思い出話をされていたのを聞き、ああ、うちもそうだった、と思い出しました。
以前「チビと暮らし始めて1年。」にも書きましたが、里子としてムスメがうちに来たばかりの時、ムスメを寝かしつけるのは、とても大変なことでした。
夜、寝かしつけようとしてもなかなか寝ないので、最初は抱っこをして近所を散歩しました。私は仕事の帰りが遅かったのでほとんどカミさんがやってましたが、ムスメは抱っこだと母と体が密着して少しは安心するのでしょうか、近所を一回りして戻ってくる頃には寝てしまうのですが、布団に下ろすときがまた一大事。うっかりすると布団に下ろしたとたんにギャーと泣き出し、また抱っこして散歩に出てゆく、ということも時々ありました。
うまく布団に寝かせたとしても、真夜中になると決まって夜驚症を発症し、2〜3時間は強烈な泣き声で泣き叫びました。
夜驚症を発症すると、何をしても泣き止みません。夢を見ながら泣いているようで、目が覚めないと泣き止まないのです。
起こそうとゆすったりポンポンたたいたりしても目が覚めるとは限らず、かえってその行為が夢と混同して恐怖感を煽るらしく、さらに激しく泣きます。ですから、泣き疲れて寝てしまうか自分で目を覚ますまではなす術がありません。
毎日、近所から子どもを虐待していると疑われないだろうかとドキドキし、夜驚症が無くても必ず何回かは大きな泣き声で起きるので親は寝不足。
夜驚症については事前に乳児院の先生や児童相談所でレクチャーがありましたが、あまりにもひどいので一度医者にも連れて行ったものの、夜驚症については医者も知らないようで、いい解決法は見つかりませんでした。
夜に一度泣いて起きるとなかなか寝ようとせず、寝かしつけるのが大変だったので、ムスメを寝かしつけた後に隣の部屋で本なんか読んでいても、寝返りを打ったその音が聞こえるだけでドキッとしたものでした。
ムスメを預かってわずか3か月ほどで原発事故が起こり、すぐにカミさんとムスメは故郷の宮崎に避難しましたが、最初は実家に泊めてもらっていました。しかし、そちらでも毎晩のごとく夜驚症を発症し、カミさんの両親はその強烈な泣き声に眠ることもできず辟易したようです。
親に気を遣うのも嫌だから、と、カミさんが宮崎に部屋を借りてそこに住むようになったのはそれから間もなくでした。引っ越した先でもやはりその大きな泣き声にハラハラしていたようです。
時々我が家に帰ってきたときも、私は仕事に差し支えるので、耳栓をしたり別の部屋で寝たりしてましたが、それでも睡眠は浅く、カミさんはムスメが泣き出すごとに起きてムスメの相手をしてあげていたのでこちらもぐっすり眠るのにはほど遠いものでした。
ムスメはロクな睡眠を取っていないので、夜中にギャーッと泣いて起きたときは、だいたい朝寝坊。
しかし何かの拍子に朝早く目が覚めてしまうとそれはそれで大変。カミさんはムスメにポンポンたたかれ、「おかーさん、おかーさん」と起こされます。大きな声で起こすので、こっちも起きてしまいます。
一応決まった時間に就寝・起床をするよう心がけていましたが、実際の睡眠のリズムはめちゃくちゃ。親もそうですがムスメ自身が一番眠りが浅かったでしょう。
カミさんの風貌は明らかにげっそりし、こんな日がいつまで続くのだろうか、と毎日毎日思いました。
しかし、それまで乳児院で他の子どもたちと毎日毎日同じような生活をしていたのが、一転して知らない大人と暮らすというのは、小さな子どもにとってはどれだけ不安が大きいことでしょう。眠りが浅かろうが、ムスメにとってはそれらのことが、自分の中でいろいろなことを整理し、新しい環境に馴染もうとするのに必要なことだったに違いありません。
ムスメは夢の中で毎晩戦っているようでした。ムスメが言葉を話すようになってから分かったのですが、一番多かったのが「〇〇したかったのにー」という寝言。今でこそ親にも平気でわがまま言って断られてもめげませんが、当時はそれほど馴染んでいない親にわがまま言って断られることにショックを覚えていたのでしょう、その気持を夢の中で清算していたのだと思います。
それから「やめてやめて」という寝言。うちに来る前までにムスメに何があったのかは分かりませんが、かつて何か恐怖心を煽る出来事があったのかもしれません。
そんないろいろな嫌な夢を見るので、きっとムスメにとって眠ることは怖いことだったのでしょう。
その寝言の声があまりにも大きいので、起きているのじゃないか?と思うときもときどきあり、見てみると寝ているので少しほっとしたものでした。
それからおよそ1年くらいしてからでしょうか、夜驚症がほとんど出なくなったのは。寝かしつけもわりと楽になったし、休日家族で出かけた帰りなんかに寝てしまったムスメを布団に下ろしても失敗してギャーッと泣き叫ばれることもなくなりました。でも夜中に大声で泣いて起きることは時々あったし、それでも習慣でまだまだゆっくりとした睡眠はとれませんでした。
まあそれも、2年半ともなるとさすがに私たちと暮らす環境に慣れてきたようで、それなりに成長したこともあり、気づいてみたら、夜は絵本を2冊くらい読めば寝てしまうし、夜中もあまり起きなくなりました。
今でもカミさんとムスメはほとんど宮崎にいるので私は何もしていませんが、カミさんが頑張ってくれたおかげでムスメは安心感を獲得したのではなかろうかと思います。
うちに来たばかりの時のムスメは、寝るときはうつ伏せ。それも、正座してそのままバタンと伏せ、ぎゅーっと縮こまるような寝方をしていたことが多かったように思います。もっと全身を延ばして力を抜けば、ゆっくり眠れるのに、と思っていましたが、その姿勢がそのときのムスメの心の状態だったのでしょう。
今の寝相は・・・横向きが多いですがだいぶ体勢が緩んできました。しかも、ときどきアジの開きみたいに両手両足を投げ出してついでにおなかもだしてバンザイの体勢していることがあります。ネコがご主人様になでられると自分からおなか出しますね、あんなかんじ。
あれだけ眠ることを怖がっていたムスメも、いつの間にか安心してゆったり眠れるようになったか、と、今までのことを振り返りながら、安堵感をしみじみと感じるのです。
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