#116
死刑囚たちの絵
2013-9-30
高橋和利「ポンタの夢」
アムネスティ・インターナショナル日本
死刑廃止のための大道寺幸子 基金
渋谷にて二日間開催されている「死刑囚の絵画展」を見に行きました。
*****
その前に・・・
私は死刑制度に反対です。
なぜか?
答えは単純です。
「人を殺してはいけない。」
それだけです。
確かに死刑囚となった人たちは「人を殺し」、やってはいけないことをやってしまいました。
その罪は問われるべきであり、何らかの形で償う必要があることに異論はありません。
でも、その「罪を償う形」が、死刑でよいのか?
「死刑」を廃止すると犯罪の増加につながるのでは?
家族や親族を殺された遺族の気持は?
犯罪の増加については、多くの国が死刑を廃止しながら爆発的に犯罪が増えているわけではないことから、死刑制度による犯罪を抑制する効果に疑問があることは明白です。しかも、最近は「死刑で死にたいから人を殺す」という人まで出てきました。
遺族方々の気持については、私は何も言えません。遺族の方々が犯人を死刑にして欲しいという気持を抱いたとしても、私はそれに対する反論はできませんし、そんな資格もありません。しかし、死刑ではなく別の方法があるのではないか?という思いは常にあります。
私は、死刑制度というのは刑罰ではなく、国家による「見せしめ」あるいは「社会に不満を抱いている国民のためのガス抜き」だと思っています。
犯人が人を殺して死刑という刑を受けるのなら、例えば、殺されなかったとしても犯人に故意に傷つけられ、体の一部を損傷した場合、犯人はなぜ被害者が受けたのと同じ体の損傷を与えられないのでしょうか?
昔は刑罰は社会を混乱に陥らせる人物を排除するという意味があったでしょう。しかし現代において刑罰というのは、罪を犯した人を更正させるという目的が大前提ではないですか。
しかし、死刑という刑は異質です。死刑を迎えるまでに更正したとしても社会に戻ること無く命を絶たれてしまう。
そこに「死刑」の矛盾があると思います。
遺族の感情に配慮するというのならば、犯人の死刑という形ではなく、犯人の更正と同時に、残された遺族たちへの最大限のケアを行う環境を整えるべきではないだろうか、と思うのです。
*****
展覧会が行われた渋谷区の施設の小さなギャラリーに、それらの絵はありました。
思っていたより入場者は多く、特に若い人たちが多かったように思います。
皆、小さく、素朴な絵。
絵画を描くための用紙や道具も制限され、絵の具などは差し入れられないので、多くはペンや色鉛筆などで描かれているとのこと。
でも、内容は多彩でした。
花などの植物を描いたもの。
楽しかった思い出。
空想、夢。
祈り。
刑務所での生活を綴ったもの。
独房の窓から見える景色(といっても目隠しがあって空の一部しか見えないようですが)。
自分の無実をぶつけるものもありました。
死刑という制度に反対するものもありました。
もっと大きく、国のあり方に疑問を持つようなものもありました。
わたしがこれらの絵を見る前にイメージしていた死刑囚たちの絵とは、これからの死を待つために心静かな心境を表現しているものだろうかと思っていましたし、実際そのような絵も多かったのですが、現代アートのようなものや漫画のようなものもあってバラエティに富んでおり、このような絵を描くことで刑を受ける日を待つ気持を整理しているのだろうか、そんなふうに思いました。
絵に言葉を添えていたものもありました。
既に死刑が執行されたある女性は、二輪の花のデッサンのそばに、こんな詩を添えていました。
詩・「母との時間」
添い寝して
唱歌唄って
抱きしめて
母を想うて
心重ねて
刑務所で出された食事の材料の絵を表形式に並べた絵を描いた、ある男性の、その絵の下には
生きてなお 水も食事もままならぬ 方々よそに 熱きみそ汁
という詩が書かれていました。
おばあちゃんの肩もみをしている子ども、羽子板を持った子ども、そしてひげ面の自分のイラストを描いたある男性は
私は今勉強を覚えて三年です
もっと勉強をしてらもっとうまく成ると思います。済みません
やはり勉強のできない人間は絵もへたです
もっと勉強します
と書いていました。
彼らはかつて社会を震え上がらせる凶悪な事件を起こし、被害者の遺族たちを悲しみのどん底に陥れたでしょう。(絵を見て彼らの中には無実の方もいると感じましたが)
しかし、今の彼らが描いたこれらの絵からは、今現在の彼ら死刑囚たちは、私たちと別の生き物ではない、同じ人間なのだ、と思わざるをえませんでした。
たまたまどこかで間違えてしまったのではないか、それがたまたま殺人という方向に向かい、戻ることができなくなってしまったのではないか・・・
犯罪は少なくなって欲しい。でも万が一、どんな犯罪に手を染めてしまったとしても、死で償うという形ではなく、社会のために生きて償うことができる、日本はそんな国になってほしい。
そう思います。
*****
「世界中で死刑のある国58カ国、
廃止国は140カ国(死刑を事実上廃止している国を含む)。」
(アムネスティ・インターナショナル日本による)
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