#157
もっと子どもを甘えさせよう
2015-2-7
ようやく里親の認定前研修が終わり、養育里親研修の修了証書をいただきました。
認定前研修は埼玉で里親になるときに受けた経験があるので、すでに学んだ内容が大半でしたが、復習も兼ねて勉強させていただきました。
里親の認定はこれからなのですが、希望者は里親会の研修会に参加させていただけるとのことでしたので、参加させていただきました。
半日の講演会でしたが、これがとてもよかったのです。
公益社団法人家庭養育促進協会の理事をなさっている岩﨑美枝子さんが講師。
わざわざ大阪からいらっしゃいました。
ベタベタの大阪弁で元気よくお話される方でしたが、何百人と里子を見てきた経験を踏まえて、里子・養子として養育される子どもはどう育てられるべきか、明確で分かりやすいお話をされました。
家庭養育促進協会とは、里親開拓に力をいれてきた民間の団体で、主に大阪・神戸で活動し、児童相談所とともに里親開拓の仕事をしているそうです。
「実親の問題が解決すれば、子どもは実親の所に戻されることが目的。それが不可能な子どもには親に代る大人を用意すべきである。」
私も含め、子どもを育てたいから里親になりたい、と思っている大人にはどきっとする言葉です。
特に文の最後にあるとおり、里親や養父母は子どものために「用意すべき」大人という役割です。
改めて里子や養子の養育とは子どもの立場に立って行われなければならないということを認識しました。
その原則を踏まえて、里親や養父母はどう里子・養子と接してゆくべきか。その具体的な内容はとても勉強になりました。
特に私が「ああ、なるほど」と思ったのは、短期養育の場合の話でしょうか。
長期養育や養子縁組は、子どもを大人になるまでずっと育てていく「親」という立場を自覚し、親子関係をつくらなければならない。
しかし、短期養育の場合は、「実親と子どもの関係を維持できるよう」に育てなければならない。
いずれ実親の元に戻る子どものために、面会の時に実親の前で子どもを抱かない、実親を非難しない、実親に子どものことをほめてあげる、面会の機会が無くても実親の存在を意識させてあげる、など。
その子どもが置かれた状況ごとに、育て方を考えてあげなければならないんですね。よくよく考えれば当たり前のことですけど。
そして講義のメインは、長期養育里親・養子縁組里親になったときの、具体的な子どもとのつき合い方。
ここからが分かりやすかったし、面白かった。
里子を預かると、子どもは「試し行動」というのをやります。一緒に暮らし始めて数日はいい子にしているのですが、少し環境にもなれてしばらくすると、親を困らせるようないろいろなことをしでかします。
これは、住む環境が大きく変わったことによる不安やこれまでの虐待などによる心の傷を持った子どもたちが、自分の好き勝手なことをして、それに対する親の反応や対応を見て自分への愛情を確かめると言われています。
パワーポイントの写真で岩﨑さんが紹介してくれた様々な事例、どれもこれもインパクトのある写真でした。
まずは「もっと食べたい」の数々。
子どもたちの目の前に、山盛りになったクリーム入りパン、目の前に埋め尽くされた何十ものヨーグルトのカップ、なぜかふりかけの小袋が何十袋も、そして味付け海苔を大きな一缶分・・・
子どもが食べ物を際限なく「もっと欲しい」と欲しがれば、普通は親が心配して「それくらいにしておきなさい」と制止します。
しかしこれらの子どもたちは、これらの欲求を止めることができません。
そこで親は、子どもの要望以上に与えたのだそうです。それも半端でないほど大量に・・・
この「大量に」「山盛りに」見えるというのがいいらしく、満足感をくすぐるのがポイント。
子どもたちはコレを見ると驚嘆し、いくつか食べるとあとはもう「いらない」となり、もうその「もっと食べたい」を止めてしまうらしいのです。
そして、次は数々のいたずら。
床に飲み物や食べ物をぶちまける、風呂場でくんだ水を廊下にぶちまける、あらゆる棚に収まっていたものを部屋中にぶちまける・・・
これ、うちでやられたらキビシいなあ・・・
でも、これ、存分にさせると、数日からせいぜい一週間くらいで止めてしまうそうです。
これもさきほどの「もっと食べたい」と一緒ですね。思う存分やってしまうと満足してしまう。
あとは赤ちゃん返りについても話してました。何かがきっかけで、ほんとうに赤ちゃんのようになるらしいです。おしめをしたがったり、あかちゃん言葉をしゃべったり、急におねしょを始めちゃったり・・・でもこれ、存分にやらせた方がいいとのこと。
試されている、と思うのではなく、試させてあげてる、と考えるくらいがいい。
甘えたがっているその時に甘えさせてあげないと、思春期に響くこともある。
そのように岩﨑さんはおっしゃってました。
すごいなあ・・・うちの子にも試し行動、あったけど、これらの事例の数々に比べたら大したことなかったです。
今でも覚えている、一番印象的だった試し行動は、娘がうちにきてしばらくした時、私が抱っこしている娘の写真を撮ろうとした妻が、不意に娘に携帯を取り上げられて、4階のベランダから下に投げられたという・・・そのとき、「来た!試し行動だ!」って思いました。妻は青くなって下に携帯探しに行きましたけど、幸い落ちた下が土の地ベタだったんで携帯は無事でした。
あとは抱っこされたままあっち行けこっち行けと指差しで親を指図したり、どこの子どもでもやってそうなことですがアレも試し行動だったかなと今思いますし、他にもいろいろあったのだと思いますが、多分些細なことだったんでしょう、あまり記憶にありません。
講義が終わった後に岩﨑さんに「うちの子は大した試し行動が無かったんでちょっと心配です」と妻と打ち明けたら、「その子その子で違うので大丈夫ですよ」とおっしゃってくれました。
甘えたい時に甘えさせるって、大切なんだなあと、本当に思いました。
うちの娘は試し行動は過去のものとなりましたが、最近娘が朝ぐずったり、自分で出来ることを私たちに「やって」とねだったりしたときに、もうお姉さんでしょと言って関わらなかったりと、あまり甘えさせないことがここのところ多くなってきたので、大いに反省しました。
娘を預かってから最初の数ヶ月は愛着形成のためと、親がくたくたになるほどできるだけ甘えさせたつもりですが、もう今は他の家庭同様に育てても大丈夫と思っているところもあったため、少し考え直しました。
そう、甘えることができるというのは、心を癒すことができる、と同時に、愛されていることを確認することができる、ということですよね。
子どもは心を癒すことで、愛されていることを確認することで、元気が出るし、次に頑張れる。
まあ親はくたびれますけど、それで子どもが元気になれば、親も元気になるし、結果的に親子関係がうまくいくのでしょう。
うちに帰ってからなるべく娘の甘えに応じるようにしたら、すごく喜んでましたよ。これからも「甘えたがっていたら存分に甘えさせる」を、心がけていきたいと思います。
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