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#46

朝日連峰縦走の旅(後編)~一縷の望み


前編ではせっかく山の稜線に出たのに雨風強い散々な山歩きになった2日目までの様子を書きましたが、さてその後。

 予定していた小屋までたどり着けず、手前の狐穴小屋に泊まることにした2泊目。


 ところで、1日目に鶴岡駅から同じバスに乗って、登山を開始してからも同じくらいのペースで登っていた2人組がおりました。

 一人は60代男性、Tさん。そしてもう一人は30代女性、Wさん。
 二人一緒にバスに乗ってきたのですが、聞こえてくるお二人の会話からすると、家族親族とかではなく他人のようです。
 うーん、どういう関係だろう・・・同じ会社の上司と部下かな、と一瞬思ったのですが明らかに違う。
 すると同じ山岳会でたまたま話が合って一緒に来たのだろうか・・・

 1泊目の大鳥小屋でも一緒だったし、そのうち会う度々でちょっと話をしたりしましたが、後で聞いた正解は
 「昨年とある山にそれぞれ単独で行ったときにたまたま何回か顔を合わせて話をしているうちに意気投合してその後いろいろな山に行く事になった山友達」
 のようです。・・・なんだかフシギです。


 それはそうと、狐穴小屋でこのTさんWさんとも一緒になりました。
 私の方はもう南側の五味沢から出るルートはあきらめて東側の朝日鉱泉から抜けようとほぼ気持が固まっていましたが、TさんWさんは朝日鉱泉から少し北の古寺鉱泉に予約を入れいるのでそこから抜ける予定ということで、そちらに一緒に行かないかと誘ってくれました。
 そうすると、次の日左沢駅までのタクシー代1万ちょとは3で割れるので一人頭のタクシー代が少し安くなります。
 私も特に朝日鉱泉から抜けることにこだわっていたわけではなかったので、古寺鉱泉から抜けることに決めました。


 さて3日目。

 朝から雨は止んでいましたが雲が厚く。

 でもちょこっとだけ南の方に青空がのぞいていたので、今日こそ晴れるかも、と期待を抱きつつ歩き始めます。5時ごろ出発。

 しかし、稜線に上がると、雨こそ降っていないものの、昨日と同じくらいの霧と強い風!まっすぐ歩けない!ああ、またかー!



 それでは、稜線での台風並み(?)に強い風を動画でお楽しみください。


前を歩く人が飛ばされそうです。あ、自分もか。

 なだらかで歩きやすいし、天気良ければすごく気持の良い稜線歩きになるのになあ・・・
 (文句ばっかり言ってますが、これはこれで好きですよ、ただ風が強すぎる・・・)

 もくもくと歩いているうちに竜門岳を過ぎ、さらに南の朝日連峰の主峰、大朝日岳へ向かいます。
 しかし、相変わらず霧で視界は悪く、風は強く。

 予定では、大朝日岳に登ったら後は下山するだけです。少しだけでも晴れてくれないかなあ。せっかくはるばる東北の山に来たのだから、せめて大朝日岳に着いた時だけでも。

 大朝日岳に近づくにつれて、一瞬フッと霧が切れて、ふわっと少し景色が見えるようになりました。でも、またすぐに霧がかかります。

 そうこうしているうちに、出発から5時間半後、大朝日岳のすぐ下の朝日小屋に到着しました。そこから大朝日岳の頂上は約15分。

 そして・・・登頂!

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・・・何も見えない。

 うーん、このまま白だけ見て帰るのか・・・まあいいか、山登りの楽しみは何もいい景色を見るだけじゃないし。

 TさんWさんと一緒に登ってきましたが、登頂写真なんか撮ったりぼーっと座ったりしているうち、休んだからそろそろ下りようかなあなんてしゃがみながら思っていると・・・





















 おおっ。

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 見えた見えた。

 霧が切れる回数が増えてきました。



 でもすぐに隠れ、しばらくするとまた見えてすぐに隠れ・・・
 そうこうしているうちに、霧が切れる時間が徐々に長くなっていきます。

 ずっと山からの展望に飢えていた三人、こことぞばかりに写真を撮まくったのでありました。



 じゃあそろそろ、と降りるころになると・・・






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 東側はすっかり景色が見えるようになってましたよ。


a0046_5.jpg真正面に月山が見えました。
 さて、朝日小屋まで下りて、昼食とった後、下山です。霧はすっかり取れ、どんどん歩いていくと、まわりの山の上はまだ雲が残ってますが、青空が広がってきました。


a0046_6.jpgダケカンバの大きな木も日差しを浴びて。 青空に覆われ、日差しが強くなり、暑くなってきました。
  青空に覆われ、日差しが強くなり、暑くなってきました。


a0046_7.jpg左側が大朝日岳、右側は午前中に歩いてきた西朝日岳と稜線 古寺山の手前で後ろを振り返ったら、大朝日岳の山頂から雲が取れていました。
 古寺山の手前で後ろを振り返ったら、大朝日岳の山頂から雲が取れていました。


a0046_8.jpg長いだらだらの下り坂をひたすら歩く。
 このあたりで大朝日岳ともお別れ。この先はシラカバ・ダケカンバやブナの森の中に入っていきます。


 昨日今日と、中が濡れた靴を履いていたせいで、ずっと足の皮がふやけ、それが歩くたびにこすれるので、足にマメがたくさんできてそれがどんどん痛くなるし、濡れて重くなったザックで肩は痛いし、早く着かないかな・・・と、ちょっと思いながら。

 それでも、木々の間から差す日の光が地面に斑状に落ちて、きれいな模様を作ってました。気持の良い下り坂。



 古寺鉱泉に着いたのが4時半。
 TさんWさんはすでに予約済みでしたが、私はもともとこちらに泊まる予定ではなかったので、泊まれるかどうか聞いてみたら即OK。


a0046_9.jpgこんなところに泊まりました。古寺鉱泉の玄関。(写真は次の日撮影)
 しかもこの夜は私たち3人の貸し切り状態。


a0046_a.jpg(左回りで)いわな、あけびの新芽のおひたし、だし、ぜんまいの煮物、きくらげの酢の物、ねまがりだけの煮物、うどのおひたし、みずのおひたし
 久しぶりのお風呂と、風呂上がりにはビール!
 夕食では山菜づくしのお料理をいただきました。


 3人で夕食を楽しんで、そのうち宿(古寺鉱泉・朝陽館)のご主人の佐藤さんも話に加わり、夕食が終わっても延々と皆でお話ししてました。

 実はTさんとWさん、二日前にこちらに泊まって、それから山に入るつもりだったのだそうですよ。
 ところがどこかの山登りの団体さんが入ってしまって空きが無く、仕方ないので下山時に泊まるプランに変えたという経緯があるそうです。
 良かったですね、泊まる日ずらして。

 宿のご主人の佐藤さん。
 どんなに泊まる人数が多くても、寝るスペースを一人二畳は確保したい、だから30人までしか泊めません。寝るところが廊下でもいいから泊まらせてくれ、というお客もいるけど、お断りしてます。そりゃなるべく多く泊めて稼ぎたいけど、やっぱりせっかく泊まるならゆっくり泊まって欲しいですから。
 そうおっしゃってました。こういう心遣いはうれしいですね。
 建物は昭和初期に建てられた古い建物だそうですが、大事に使っているのがよく分かります。

 昨年は福島第一原発事故の影響で、山形は放射能汚染はあまり関係ないのに(確かに 早川先生の地図 なんか見ると関東の多くの地域とさほど変らない気がします)東北でひとくくりにされたから客が全く来なくて本当にきつかった、東電に補償して欲しいくらいだとか言ってました。
 東北の山形・秋田などの日本海側は太平洋側に比べ歴史的にも災害が少ないそうで、ぜひ首都は山形か秋田に移してほしいと半ば冗談で言ってましたけど。
 佐藤さん、お歳は40代後半だそうですが最近おじいちゃんになられたそうで本当に孫が可愛いとか、最近行きつけの飲み屋で知り合った若い女の子たちと飲んでいる、とか面白い話をしてくれます。

 それに対抗するはおしゃべり好きのWさん。山を始めた時の話(3〜4年前だそうです)や立山のボッカさんと知り合って聞いた話、テントを買ったので先週Tさんと八ヶ岳へ行って初使用したのに雨だった話などを披露、佐藤さんと広間のあっち側とこっち側で話をしているので話のキャッチボールをしているようでした。
 昨年WさんにつかまってしまったTさん。Tさんは20〜30代のころ山登りしていましたがその後仕事が忙しくなって山から離れ、数年前にまた登り始めたのだそう。
 この間娘さんが免許取り立てなのでバイクに乗る練習につき合っていたら二段階停止を知らずに交差点を曲がってしまったものだから父娘でおまわりさんに捕まったとかで、おちゃめぶりを見せてくれました。

 そうこうしているうちにあっという間に時間が経って9時になってしまいました。山の旅はこれでおしまい。

古寺鉱泉・朝陽館  http://www.town.oe.yamagata.jp/modules/sightsee/index.php?content_id=6

今回のルート


<番外編>山寺へ行こう!

 4日目、タクシーを呼んで3人で左沢駅へ。

 TさんWさんは山寺に寄ってから山形から新幹線で東京に帰る予定だそうで、もし時間があるなら、と一緒に山寺に行くのを誘われましたが、ちょっと時間が・・・と、最初は断りました。そこには理由が。

 私は帰りのバス、新潟駅からの夜行バスを予約してたんですね。
 なぜかというと。

 前編で、最初は南側の五味沢に抜ける計画だった話を書きましたが、当初のルートで時間を計算すると下山してバス停到着がバスの出発時間ぎりぎりですが、バスがJR米坂線の小国駅までたどり着くとそのバスにちょうどよく接続する列車が米沢行きです。米沢からバスや新幹線で帰るのがスムーズなルート。
 しかしそれでは余裕が無いので、念のためその1本後のバスに乗るとすると、逆方向の新潟行きにしか乗れないことが分かりました。しかもそれが終列車。
 よって、万が一ちょうどよいバスに下山が間に合わず新潟行きにしか乗れない場合を想定して、新潟発新宿行きの夜行バスを予約していたのです。

 ところが、縦走の途中で予定変更、東側の古寺鉱泉に抜けてしまったがために、帰りはそこからJR奥羽本線で米沢まで南下し、そこからわざわざJR米坂線で西に向かって日本海に出て、また南下して新潟まで行き、そこからバスに乗るという大回りルートを使わなければならなくなったのです。

 で、終電だと山寺に寄る時間はあるが何かあって列車が遅れた場合を考えると難しいかも・・・その1本前だと接続が悪く、山寺に寄る時間はぎりぎりです。
 そんなわけで最初は断っていたのですが、やっぱり行こうかな・・・何かあったらその時だ・・・と思い直し、Wさんが万が一の場合は山形~米沢間を新幹線を使えば大丈夫では?という提案もあって、一緒に山寺に行くことにしました。

 山寺、久しぶりに来ましたけど、やっぱりいいところですね。

 その昔、松尾芭蕉さんが「閑さや岩にしみ入る蝉の声」とい句を詠んだ場所です。

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駅から見たところ。見えるでしょうか、山の中腹に何やら建物らしきものが建っているのが

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階段を登っていくと、途中途中にいろいろな建物が現れます。

 たぶん山寺の一番高いところにある建物、五大堂からの眺め。

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集落が箱庭に見えます。

 TさんWさんのおかげでなかなか楽しい山旅になりました。ありがとうございました。


a0046_e.jpgJR米坂線の列車はうねうねと蛇行する川に沿って峠を越えます。
 さて、山形から先は新潟まで一人旅。


a0046_f.jpg明日から仕事だー
 日本海沿いのJR羽越本線に出ると、列車の中から西側に沈みかけの夕日が見えましたよ。


 遠回りルートも全く苦にならず、普通列車の旅を楽しんでしまう私。
 特急より普通列車。地元の乗客の様子を眺めるのは楽しいものです。


2012-7-25

カテゴリー:旅と山歩き

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