#105
日比谷公園 一〇〇年の矜持に学ぶ
進士 五十八 鹿島出版会
日比谷公園は「日本最初の洋風公園」として明治36年に開園した公園で、その名前は多くの方が知っておられると思います。
森や広場、花壇、公会堂や野外音楽堂、そしていくつかのレストランなどがあり、開園当初に植えられて巨木となった木が多く残る、歴史が感じられる公園ですね。
進士さんは造園学の学者さんとしては大御所の方ですが、学生の時に日比谷公園について研究していたそうで、日比谷公園の歴史についてまとめた1冊です。
日比谷公園は、広場や花壇などのおおまかなレイアウトは開園当初からあまり変わりないそうなのですが、その歴史は実に様々なことがあったんですね。
設計したのは林学者の本多静六氏。
そもそも、日比谷公園は東京駅を設計した建築家・辰野金吾氏に設計がゆだねられていたそうですが、公園の設計は初めてだと告白、その設計に意見を言った本多静六氏に設計を託したとあります。
辰野金吾氏の設計図が掲載されていましたが、敷地一面が芝生で周囲に疎林、真ん中にシンメトリーの広場と池といった、いかにも当時流行りの建築的デザインです。その他に日本園芸会の方たちの案なども併せて掲載されてましたが、本田氏の案は洋風とは言いながらも、「日本的手法」をうまく取り込んだのが特徴だそうです。
今でこそ様々な種類の公園がありますが、日比谷公園ではいろいろな試みをしてました。ある時期は動物園があったり、子供の遊び場としての公園の機能を実践したり、そして一時期、ネーチュアスタディ(自然学習)という、一種の体験学習の実践も、何と戦前に行われていたんですね。
そして、戦時中はバラックと畑で埋め尽くされたこともありました。戦後は、モーターショーや緑化フェアなど、大きなイベントもこの公園から始まりました。
こうして歴史を積み重ねてきた日比谷公園ですが、何度となく改造案が持ち出されましたが、その度にたち消えました。進士さんが検討委員会の委員になったときも、公園の改造に反対したようです。
日比谷公園は時代の波にもまれながらも、市民に親しまれ、歴史的・文化的財産となっていったのです。進士さんの、この公園に対する並々ならぬ愛情を感じました。
日比谷公園は都市計画的アプローチでその姿を捉えられがちですが、造園学的な視点でこの公園に特化して論じた本としては貴重だと思います。
2012-2-14
カテゴリー:建築・造園
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