#108
写真ノ話
荒木 経惟 白水社
言わずと知れたアラーキーこと写真家の荒木さん。私の大好きな写真家です。
この本は、荒木さんの講演やインタビューから、荒木さんのこれまでの活動について振り返った、いわば荒木さんの「写真論」。
こうしてみると、何と精力的な活動をしていること。
荒木さんといえば「卑猥な写真ばかりを撮る」キワモノの写真家のイメージがありますが、一方で早くに亡くした奥さんの陽子さんや飼い猫のチロを愛し抜いた「一途な人」でもあります。自分の奥さんとの結婚から生活から葬式まで写真を撮ってそれを発表してしまう写真家って、他にいません。
生き方そのものが「エロ」に染まった人ではありますが、そこには「命」や「生身の人」に対する愛情が感じられます。裸のモデルさんの写真からは、モデルさんと荒木さんとの心と心の交流のようなものが感じられるんですね。この本を読んでも、そのことが十分に感じられました。
そんな荒木さん、かつては電通で働いていらっしゃっていたことは有名ですが、辞めたのは自発的に辞めたのではなく「辞めさせられた」とは知りませんでした。もし電通に「辞めさせられる」ことが無かったら、きっと今の「アラーキー」はなかったことでしょう。
生き様そのものが「アート」みたいな人ですから、海外でうけるのも分かるような気がします。
自分の私生活まで被写体にした荒木さんの、楽しい話が満載で、つらいことがあろうとも人生そのものを遊んで楽しんでいる様子がうかがえて楽しい気分になりました。
2012-2-23
カテゴリー:芸術論
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