#139
苦海浄土
石牟礼 道子 講談社
約60年前、突如現れた謎の病、水俣病。
この本に登場する人たちは、その多くは漁を業として、そして海で採れた魚介類を食べて暮らしていた、普通の子ども、大人、老人たち。
その人たちがある日から突如日常の行動に支障が出始め、それは徐々に深刻さを増して体全体が蝕まれていく。
そして患者となった人が普通の生活が出来なくなっても、何がいけないのだろう、と考え続けながらも、それでもなお家族の一員として世話をする家族たち、明日は我が身かと戦々恐々としながら日々を過ごす隣近所の人たち、あそこの誰それもなった、そこの誰それもなった、と常に飛び交う噂。
そのうち工場排水が原因と疑われはじめながらも、原因とは確認できないと様々な理由を盾に自社の責任を認めようとしない会社・チッソ、それをいつまでも放置したままでなかなか腰を上げない自治体・政府。
日常が脅かされ、それでもなお日常を生きなければいけない患者と家族たちの苦悩が伝わってきます。人として生きていきたいとする姿に、慈しみを感じるのです。
そして、否が応でも、福島第一原発事故に照らし合わせてしまいます。
つい先日も、某大臣が、新たな患者を掘り起こされるのは迷惑だと発言したばかり。約60年たってもなお、未だにこの問題は続いているのです。
福島第一原発の件は始まったばかりだというのに。
2012-5-9
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