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#214
ヒーローを待っていても世界は変わらない
湯浅 誠 朝日新聞出版
湯浅さんは反貧困ネットワークを立ち上げた方で、近年では2008年の年越し派遣村が有名になりましたが、一時鳩山内閣の下で内閣府参与という立場でアドバイザーもやっていたようです。
湯浅さんが言っているヒーローとは、既得権益にどっぷりつかる「悪者」をやっつけて、世の中を良くしてくれる正義の味方、とでも言いましょうか。
それはテレビの中ではそれで良しとして、現実社会にはそんな人はいない、というのが湯浅さんの考えです。なぜなら、国民それぞれにとっての「悪者」はそれぞれ違うから。
自分はこの悪者をやっつけて欲しい、と思っても、当の自分が他の人にとって「悪者」かもしれない。
ですから、世の中が悪い、誰それが悪いと思っても、そのお互いに投げかける不信感が世の中を消耗してしまう。誰か何とかして欲しいと思っても、誰かがその役をやらなけらばならないわけで、待っていても何も変わらない。
「自己責任」という言葉が流行りましたが、自分のことは自分で解決すべしという態度が連鎖的につながり、結局社会全体が負の方向へ向かってしまうということですね。
そのことで解りやすかった文がありました。
「(ふつうの人より生産性が無いのに身体障害者で障害年金を受け取っている兄と変わらない収入を得ているふつうの人がいるこの世の中で、仮に兄から雇用先や障害年金が奪われたとして)兄だけを取り出して収支のつじつまを合わせたつもりになっても、現実の収支は母や私、またそれを介した人々の諸活動全体の収支と深く結びついています。結果として、惜しんで削った分の何十倍か何百倍かの活力と富を、社会派失うことになります。それは回りまわって、兄を「既得権益」だと主張した人の生活利益を彫り崩すことになるでしょう。」
貧困層という、決められた社会の枠からこぼれ落ちた人たちと接してきた湯浅さんだからこそ、ずしりと重みを持った言葉。
多様性を認める。行動する。そこから始めなくてはいけないのかもしれません。
2013-2-8
カテゴリー:日本の社会問題
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