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#321

日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点

山岸 俊男 集英社インターナショナル (2008)


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 目次を見ると『「日本人らしさ」という幻想』『日本人の正体は「個人主義者」だった!?』『武士道精神が日本のモラルを破壊する』・・・など、刺激的な見出し。

 本のタイトル・日本の「安心」はなぜ、消えたのか、という言葉に、確かに昔より安心して暮らせなくなったかもね・・・と思いながら読み始めましたが。

 本の中で、日本人はアメリカ人より個人主義だ、とあるので、そんなことあるのか?と思いましたが、山岸さんが行った、3人一組のグループで作業を行うという実験で「アメリカ人の方は、多少、他人に足を引っ張られようとも共同作業を選ぶ」ということが分かったようです。

 山岸さんは、「人を見たら泥棒と思え」と考える日本人と「渡る世間に鬼は無し」と考えるアメリカ人という例えで、日本人は他者への信頼感が弱くアメリカ人は強い、と説明しています。
 そして、その日本人がこれまで維持してきた社会を「安心社会」、アメリカ人が作り上げてきた社会を「信頼社会」と呼んでいます。
安心社会とは、集団主義というシステムが安心を与える社会であり、個人が他者を信頼しなくても回る社会。
信頼社会とはそれぞれが他者と信頼関係を結ぶ社会。

 これまで安心社会だった日本では集団が個人に安心を与えてくれましたが、集団が個人を守らなくなった今、自らが他者を信頼することがあまり無かった日本人は自らの力で他者を信頼できなくなっている。一方で、信頼社会では多少のリスクを覚悟しても他者を信頼し協力しあいそれ以上のメリットを得ようとする社会であり、グローバル化が進む今の日本では、閉鎖社会に適した「安心社会」から開放的な「信頼社会」への脱却が必要である・・・

 「安心」が消えつつある日本で再び「安心」を取り戻す策も提案しています。
 精神論ではなく、人間の本質的な部分を理解し、それに適した方法を用いることを勧めています。

 なるほど、と思いました。
 極論に近いと感じる部分もありましたが、傾向を把握するという意味では分かりやすかったです。
 世の中がどんどん変わっていく中で昔の方法をあてはめてみようとしてもどんどん歪みが大きくなるだけです。
 この本にあるように信頼社会への脱却が今後日本が進むべき道なのかもしれません。
 しかし、日本の先人たちがこれまで培ってきた精神を尊重しうまく取り入れることもできるはずであり、「科学者が人間であること」という本に「重ね描き」について紹介されていましたが、「安心社会」と「信頼社会」双方を「重ね描き」するという手もあるのではないか、と思ったりもしました。

2014-5-30

カテゴリー:日本の文化と歴史日本の社会問題

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